全国大会と育成年代の考察
私たち日本人にとって全国大会は当然のように存在し、それが各カテゴリでの目標となっております。
全国大会への出場回数や優勝経験などがチームのステータスを高め、選手の価値を向上させる重要な要素となっています。
しかし、その一方で欧州や南米などは、そもそも全国大会が存在しないか、廃止されています。
リーグ戦が主要で、プロと同じような日程でホーム&アウェイの試合が行われています。
カップ戦やトレマも数も少ないですね。
この事実に対して、日本でも全国大会に対して賛否があります。
それについて、私見を書いていきます。
育成年代は、サッカーを生涯スポーツとして楽しむという側面と、プロスポーツとして競技レベルを向上させるという側面の2つの要素があります。
育成年代は、この2つの要素が入り混じっていることで、より複雑になっているのではないでしょうか。
日本の生涯スポーツとしてのサッカー
競技人口の減少と育成年代の課題
生涯スポーツとしてのサッカーは、ジュニアからシニアまでサッカーを楽しむことを目的としています。
しかし、その競技人口は大人になるにつれて大幅に減少しています。
合計平均から大体の減少率を添付していますが、統計から分かる通り、4種から1種へ進むと、競技者登録は約半数にまで減少しています。
社会人になると競技人生に終止符を打つのも分かりますが、それよりも問題なのが、育成年代です。
ジュニアユースに進む段階で約15%の選手がサッカーを辞め、ユースに進むと約42%もの選手が競技としてのサッカーをやめています。
文化的背景や大学進学によるサッカー離れの要因
日本では、サッカーを競技として続けていく環境がまだ整備されていないという事情や、大学進学のために純粋にサッカーを楽しむ時間が少ないという事情もあります。
このような文化的背景も高校年代でのサッカー離れの一因です。
生涯スポーツとしての役割の未達成感
しかし、問題なのは育成年代でサッカーを楽しむことができない選手が少なからず存在し、それが原因で選手が多く辞めている現状があります。
これについては私見ですので、データはないです。
ただ「サッカーはもういいや」と言って、辞めてしまった選手を少なからず知っているため、そういう選手も存在するということです。
このような状況を考えると生涯スポーツとしての役割は、まだまだ果たせていないと感じてしまいます。
競技レベル向上のためのサッカー
海外での活躍や日本のドリブルメソッドの進化
プロ選手を目指す育成年代の選手も増え、すでに海外でも活躍する選手が多数存在しており、競技レベル向上は順調に進んでいると感じています。
特に日本のドリブルメソッドは、海外でも注目をされています。
息子が留学していた時にも、スペインのチームが日本のドリブルメソッドをオンラインでトレーニングする時間もあったようです(デザイナーさんではないです)。
ですので、ドリブルトレーニングなどの強みは、育成年代で進化していると感じています。
トレセンの機能と競技レベル向上への貢献
トレセンには、晩熟な選手を見逃してしまうなどの問題(エリート制度はありますが、育成年代の成長速度の違いは年単位で差があり、どうしても早熟の選手に目が行ってしまう問題)があり、万能ではないですが、それなりの機能を果たし、競技レベル向上に貢献していると思います。
W杯での成績向上とアジアトップ国への成長
そのおかげでW杯では、アジア枠拡大したとはいえ、近年では上位での突破が多く、拡大など関係なく優れた成績を収め、アジアトップの国に育っています。
2つの要素と全国大会の賛否と問題点
競技レベル向上は順調な一方で、競技人口の減少が懸念されています。
この問題の一因として挙げられているのが全国大会です。
全国大会による育成への影響と批判
全国大会に対する意見として、勝利至上主義になり過ぎて、「子供が無理をしてしまう。」「燃え尽きてしまう。」「勝ちたいがために補欠を作る」「リスクを回避した保守的なサッカーが行われる」
といった意見が多いようです。
私は、全国大会が必ずしも必要ではないと考えていますが、全国大会が選手の育成を妨げたり、補欠を生み出したり、一部の選手にとって面白くないものにしているとは思っていません。
選手にとっては、一つの形式的な目標ともなりますし、全国大会があることで、自分たちの実力を評価する指標にもなりえるので、あっても構わないとも思います。
ただその全国大会の実力の尺度が適切かどうかはまた別の話だと思いますけどね。
適切な指導と長期的な成長の重要性
勝利至上主義から来る問題は、チームのその指導者に原因があると考えています。
選手たちの長期的な育成が重要であり、一人一人の成長をサポートすることが指導者の役目だと思っています。
全国大会という舞台でも、日々の練習の成果を存分に発揮すれば良いのです。
全登録メンバーが出場し、勝利を目指すことで、補欠や育成に関する問題も解決していけるのではないでしょうか。
それができないのは、チームのプレーモデルが構築できない指導者が問題であり、チームが上手くいかない原因を選手に押し付けて、ポテンシャルの高い選手に頼る傾向にあるのだと考えます。
全国大会であろうと、全登録選手が出場して、チームが練習したことに挑戦すれば、補欠や育成に関する問題は、多少なりとも解決されるでしょう。
それにより競技人口の減少も少なくとも一部は食い止められるのではないでしょうか。
全国大会への出場回数や優勝の肩書きが、チームの価値を高める一つの要素としてみることもできますが、私にとってはそれよりも選手の成長やステップアップ、サッカーを楽しむこと、そして、サッカーへの情熱の向上がチームにとっての価値ある要素だと考えています。
スペインの育成年代の環境と考え方の紹介
何故、私がこのように考えるのかというと、スペインの育成年代の環境が私自身に納得感を与えたからです。
スペインでは、年間にリーグ戦がおおよそ30試合程度です。
その他にも、いくつかの大きなカップ戦が存在します(ただし、全てのチームが参加する訳ではありません)。
TRM(トレーニングマッチ)もありますが、少ないです。
試合数は多くても1日1試合が一般的で、週に1~2試合です。
年間試合数が多いチームでも40~45試合くらいですね。
アレビンであれば、15分×4ピリオドの7人制で、1試合の時間は1時間ですね。
登録人数は12人で1人1ピリオド以上出場。
選手たちは、その出場時間で全ての力を出し切ります。
例えそれが15分であってもです。
それくらいインテンシティの高い試合となります。
試合によっては、救急車が待機していることもあります。
1つのクラブチームで4~8チームくらい編成できるほど在籍選手がおり、レベルに応じたリーグ分けが行われていて、どのチームもトップリーグ昇格を目指して競い合っています。
そして、どの試合も上位リーグのチームのスカウトが多数訪れ、優秀な選手は、上位リーグのチームがスカウトされるのです。
逆に成績の悪い選手やチームに合わない選手は、他のチームに移籍することになります。
すでにプロと同じですね。
ですので、いい選手は上のリーグへ行き、同じレベルの選手と戦いますし、成長が遅い選手やレベルが足りない選手は、下位リーグで同じレベルの選手と試合をします。
まとめ
チーム内の選手レベルの均一化
日本では、育成年代の移籍を嫌う方が多いですが、育成の場として考えると選手にあった環境に移籍できることは、その選手にとってもそのチームにとっても大きな利益となると考えています。
この考え方は、集団の特性による考察から来ています。
選手を囲い込むことが、本当に良いことかどうか疑問に思っています。
選手の成長を考えると、弱小チームのエースとして突出した状態にいるのは、もったいないと思います。
そのチームからするとエースが抜けるのはものすごく痛いことなのは重々承知しております。
しかし、エース選手が他のチームに移籍することによって、チーム内の選手レベルが均一化され、同じレベルの選手同士で成長していくことができるので、選手の練習環境にはその方が望ましいのではないかと考えます。
そうすると、人気のあるチームに優秀な選手が集まり、人気がないチームは人が集まらなくなって潰れるじゃないかと言われるかもしれませんが、消費者に必要とされる努力や工夫をすればチームが潰れることはなくなりますし、指導者自身も成長する必要があると思います。
チームレベルにあった試合環境の整備
それぞれのチームが、それぞれの良さを持ち、様々なレベルの環境が生まれ、選手の成長を主目標とすれば、その試合の場がリーグ戦であっても全国大会であっても、どちらでも良いと思います。
- 選手が憧れるチームや環境
- ステップアップするためのチームや環境
- サッカーを楽しみ、さらにサッカーを続けたいと思わせるチームや環境
日本でもこうした試合の充実と選手レベルに合わせた環境ができると良いなと思います。
ただ試合数が多すぎるのは、良くないと思いますけどね。
選手全員が成長できる全国大会やリーグ戦へ
全国大会でもリーグ戦でも、主題が勝ち負けではなく、選手が成長を実感できる場になることを願っています。
それができるのは、チームの方針と指導者だと考えています
選手全員が成長した結果、勝利を収める喜びは、チームの財産だと思います。
日本サッカー協会や各都道府県協会の公式戦からこうした取り組みを推進できないものか。
是非、そのような全国大会になって欲しいし、各カテゴリーのリーグ戦になって欲しいです。
どのレベルの選手でも生涯サッカーを楽しめる国になっていってほしいなと思っています。