Twitterにて、最近よく正対理論について流れてきます。
新しい情報は、どんなものでもインプットすべきなので、今回は、正対理論について思うことを書いていこうと思います。
正対理論って必要?
正対とは、体の正面を守備者に向け、相対することである。
つまり、ボール保持者はディフェンスに対して体を向けてプレーすると良い。
とのことです。
その時に必要な技術として、インサイドキックは、体の正面に蹴るパター型ではなく、左右に蹴り分けることができる正しいインサイドキックが重要なんだそうです。
で、組み立てにおいて、この正対ができるかどうかで上手い下手が大きく関わるのだそうです。
新しい理論が出てくるのは良い事
ここまで簡単にググって調べただけで、僕的には、インプットする必要がないものだと思ってしまいました。
もちろん新しい理論が出てくるのは喜ばしいことで、それ自体を否定するつもりもありません。
僕がやっていることの方が合っていると声高に言う事もありません。
原理原則としてそういう共通認識を作るのは良いことですし、チームの助けになります。
そして、万が一間違った理論や局所的な理論が流行ったとしても、恐らくその理論を覆す理論が出て来て、それぞれが補完し合い、良い物が生まれてくる。
その繰り返しで、より良い原則ができていくんだと思います。
だから、こういう理論が出てくるのは喜ばしいですね。
この理論の肯定者の方々に、より良く煮詰めてほしいです。
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何故?必要ないと思ったか?
まず、体の向きの決め方は、個人戦術と集団プレー戦術の観点から決めるので、そもそも考え方が違うなと思ったからです。
正対するのは、アタッキングサードの勝負の時くらいかなと。
体の向きの決め方
集団プレー戦術は、チームを機能させるための原則です。
これは、ビルドアップで5つ。フィニッシュゾーンで2つあります。
ビルドアップでは
- ライン間のバランス
- ラインのバランス
- サイドチェンジ
- リスクマネジメント
- ゾーンを出る
となります。
これらを紐解いていくと体の向きの判断基準が理解できます。
オリエンタード
オリエンタードとは、指向性です。
つまり、体の向きのこと。
その決め方は、チームを機能させようとした時は、ボールと味方を結ぶ体の向きです。
もちろんこれには、他にも判断基準があり原理原則を理解する必要がありますが、基本的には、ボールと味方を結びます。
例1
青のフリーマンは、左サイドのボールホルダーと右サイドを結ぶ体の向きを作ります。
これは、集団プレー戦術のサイドチェンジを認知する為とプレーをスムーズにさせるためです。
これは目の前のディフェンスが正面にいようが、ボール側に寄っていようが、右サイドに寄っていようが変わることはありません。
そして、実は、立ち位置も理解が必要になります。
例2
フリーマンの目の前の担当ディフェンスの青い縦ラインが基準となり、そのラインよりもボールから離れるとサイドチェンジがしやすいです。
縦ラインよりもボール側でボールを受けるとサイドチェンジがしにくいです。
これは、正対理論とは、違う観点からの体の向きになります。
個人戦術としてのオリエンタード
個人戦術は、ボールを持っていない時に担当マークに対する解決行動となります。
前進するための解決行動なので、この時に考えることは、ビルドアップならばスペラール(ライン超え)です。
特にサリーダデバロンやプログレシオンは、数的優位での前進が理想となります。
個人戦術で使う行動は、アンプリトゥ、プロフンディダ、デスマルケ、ペルムータオフェンシーバの4つです。
アンプリトゥとプロフンディダは、前進と継続のサポートの調整で使います。
特に前進のサポートが取れた場合のオリエンタード(体の向き)は、担当ディフェンスに勝った状態なので前進となります。
ですので、
例3
ボールと前進のスペースを結んだ体の向きとなります。
この状態で受けることができたら、プログレシオンに移行します。
ミドルラインで、2対1の状況を使った前進となります。
因みに、これ正対してるじゃん?と言われるかもしれませんが、ディフェンスがどこにいてもこの体の向きは、変わりません。
何故なら、解決行動は前進のためにしているものですから、前進のスペースとボールを両方認知できる体の向きが必要だからです。
右ウイングは、ボールを受けた時にはプレーの答えが出る仕組みになっています。
それは、
例4
- 縦切りのアプローチなら中央へのパスで勝ち。
- 中央切りのアプローチならファーストタッチで前進のコンドゥクシオン(ボールを運ぶ)で勝ち。
- 最短距離のアプローチで間に合いそうであれば、ボールを迎えに行きつつ中央へパスで勝ち。
- 最短距離のアプローチで間に合わなさそうでも中央へのパスで勝ち。
つまり、ボールを受ける前にディフェンスの行動を認知することで、より良い答えにたどり着くことができます。
これは、前に息子が何故プレースピードが早いかっていう記事で書いたことです。
そういう視点で見ると、この切り抜き動画には、色んな技術が入っているなと思います(息子びいきですいません)。
ただシンプルにボールを動かしているだけではなく、常に答えの選択肢がある中で相手の行動を認知し、より良い答えに対して、ボールをコントロールする。
この原理原則の中に正対理論を挟む余地はあまりありません。
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フィハールとコントラピエ
あるとしたら、フィハールかコントラピエです。
フィハールとは、ピン止めの事ですが、コンドゥクシオンの一つです。
相手に対してコンドゥクシオンし、相手をその場にピン止めする。
もしくは、相手をボールに引き付けて、ピン止めする技術の事を言います。
例5
相手をピン止めしている間に、味方の動きを引き出す。
または、味方をフリーにする時に使います。
この時は、相手に対して正対しますので、正対理論と同じなのかなと思います。
コントラピエは、フィハールでも使いますし、アタカール エル バロン(ボールを迎えに行く)の時にも使います。
相手を容易に飛び込ませないように両足の間に止めて正対します。
サッカーではそこまで使わないかもしれませんが、フットサルでよく見ますね。
連続正対なる理論もある
目の前とは違うディフェンスに対して、体を向けて正対し、ボールを触れさせないのだとか。
これに関しては、僕の頭では理解できなかったので、紹介されていたプレーが入った動画を貼っておきます。
冒頭の部分が紹介されていましたプレーです。
それとか1分52秒からのシーンのようなプレーが連続正対なんだろうなと。
これらに関しては、連続正対しているのかは分かりませんが、僕はプロテクシオンかなと思ってしまいます。
プロテクシオン
プロテクシオンとは、ボールを保護する事。
ボールを相手のいないところに置く。もしくは、ボールと相手の間の体を置くことです。
冒頭のシーンなんかは、連続して相手のいないところにボールを置いているのだと解釈しています。
正対する時は、レガテする時
つまり、フィニッシュシーンやアタッキングサードなどの1対1の時ですね。
最後は、正対して左右にかわしてシュートやクロス。
または、レガテしてかボールをよりゴールに運ぶときなんかによく使うと思います。
ベルナルドシウバに関しては、プログレシオンでも1対1で駆け引きしていますが。
最後にキックのことに関して
パター型が正しいとか斜めに蹴り出すインサイドキックが正しいとか、おそらく海外の選手はそんなこと考えてもないし、習ってもいないと思います(笑)
速いパスを出すのにインステップでも蹴りますし。インサイドじゃなく逆足のアウトサイドでキックすることもあります。
そんなキックの形に拘っていないんです。
その時その時で、どんな形であれ、正解に対して必要なボールを出すのが正解なので。
それがインサイドとかインステップとかトゥーとかアウトサイドとか訳の分からないところで蹴っても、正解のところにボールが届けばなんでもいいです(笑)
ということで
正対理論に関しては、使うところは限られてるけど、全部が全部そうだとは僕は思わなかったので、今のところ正対理論を特筆して、取り入れていこうとは思わなかったです。
ただ、だからと言って僕が言っていることが正解ということを主張したいわけではありません。
色んな方法があり、それを取捨選択するのは、個人の自由です。
選択肢がないとどれが好みとか選ぶことができないので、今回、こうして考えていることを比較して書いてみました。
ただ書いていて思ったのは、日本の戦術的な組み立てで相性が良いのは、この正対理論じゃないかとは思いましたね。
僕が書いているのは、結局スペイン寄りの思考ですし。
そもそもその立ち位置だとか、体の向きを作る集団プレー戦術や個人戦術の概念が、浸透していないので。
やっぱり新しい理論が出てくると面白いですね。