アジリティの概要
アジリティとは
方向転換能力のこと。
定義としては、刺激に応じた速度または方向の変化を伴う急速の全身運動と定義される。
認知による神経回路の刺激による反応の側面と身体を素早く方向転換する身体的側面があり、広く一般的に知られているのは、身体的方向転換能力のことをアジリティと呼ぶ。
アジリティの重要性
サッカーやバスケットボール、ハンドボールのようなフィールド競技においては、攻守における前進後退や左右のスライドのような方向転換のみならず、競技者同士の1対1において多種多様な動きが必要になり、それに対応する必要がある。
つまり、アジリティが高ければ質的優位を得られることになる。
質的優位を得られる選手は、チームにも必要な存在となる。
非反応系アジリティと反応系アジリティ
アジリティには非反応系アジリティと反応系アジリティがあり、その二つは、区別して考える必要がある。
非反応系アジリティは、判断要素がなくドリル的に方向転換を行う身体的な方向転換能力である。
反応系アジリティは、認知から神経回路を経て身体の意思決定要素が含まれた方向転換能力である。
反応系アジリティの特異性
反応系アジリティの要素として、判断が求められるが、矢印方向に対して反応するような簡単な知覚判断は、神経回路の伝達に大きく影響しないので、ほとんどの選手で大きな差は出ない。
しかし、実際の選手の動きに反応する時には、多くの情報を認知し知覚、記憶、推測、問題解決の経路を経て、方向転換を行うので選手の方向転換能力に大きな差が生まれる。
アジリティの要素
反応系
知覚➟記憶➟推測➟問題解決となり、
必要な段階は、入力系➟情報処理➟出力系となる。
視覚能力の向上、脳の情報処理能力、経験量、神経伝達回路の向上が必要となります。
非反応系
身長、体重による身体的負荷、筋出力、フォーム、テクニックが非反応アジリティに関係しています。
身体バランスや身体機能、身体能力の向上、ステップ技術が必要となります。
身長
身長があると重心のバランスが繊細になってくる。自身の身長を理解し、バランスを整える必要がある。
体重
体重が軽ければ方向転換しやすく、重ければ方向転換しづらくなる。
軽い体重の方が、小さい力で方向転換できるし、90°以上の方向転換は、減速と停止、再加速が必要となるため、体重が重いと大きな力が必要となってくる。
身体機能が重要なテクニック
体幹の傾きとバランスの調整に必要な体幹、足幅の調整、股関節の内旋外旋、足の接地位置や足の親指や小指を使うステップ。
股関節の内旋外旋の重要性
前進の方向転換におけるテクニックとして、股関節の内旋外旋が重要となってくる。
股関節は、一般的に内旋40°、外旋45°が、平均値として出ているが、個人差がある。
この股関節の動きが、方向転換を円滑にできるようにしている。
前進方向への股関節を使った方向転換では、速度の減速がほとんどない。
減速停止後のクイックネス
後退方向への方向転換では、減速停止が必要となり、その後の加速が必要となる。
速度の素早い停止と方向転換後の加速を高める下肢の筋出力とフォーム、ステップ技術が必要。
アジリティトレーニング
アジリティのトレーニングとしては、前述の通り、二つの要素を鍛えていくことが必要となります。
一つは反応系で、認知からの神経経路による情報処理能力と問題解決行動を出力する神経伝達です。
もう一つは非反応系で、フォームバランスや身体機能、身体能力、ステップ技術です。
反応系トレーニング
反応系トレーニングは、リアクションとなるため、目のストレッチやライフキネティック、コーディネーショントレーニングなどが有効となります。また、実際の相手の動きを多く経験し、神経経路での整理整頓や思考の時間を短くする必要があります。
膝の向きや身体バランス、リズム等のキーファクターを意識し、効率よく経験することが大切となります。
非反応系トレーニング
コーディネーショントレーニング、フォームの改善、SAQトレーニング(ラダー等も含む)や必要な筋力トレーニングなどが有効となります。
体を自由に扱う能力が必要となり、神経伝達をスムーズにするコーディネーショントレーニングやステップの技術を向上させながら神経伝達が上昇するSAQトレーニング。
それに加え主要な筋肉のトレーニングのみならず、多くの筋肉を使えるようにする筋力トレーニング等、できるだけ筋出力を出せるように意識することが大切となります。